レビー小体型認知症(DLB)とは、脳にレビー小体というたんぱく質が蓄積されることによっておこる認知症です。
認知症患者さんの20%の割合がこのタイプの認知症だとされています。
この認知症にり患すると、幻視やパーキンソン症状が特徴的に現れることがあります。

私は以前、デイサービスに勤務している際に、レビー小体型認知症の方を対象に音楽療法を行ったことがあります。
その際のセッションの内容や、効果についてご紹介します。

音楽療法を行った際のクライエントの状態

レビー小体型認知症の安男さん(仮名:75歳)は、いくつかのデイサービスに利用を断られた上で、私が勤務するデイサービスを利用することになりました。

安男さんは、幻視の症状がひどく、パーキンソン症状である小股での歩行や、手の震えがみられました。

さらに、幻視や幻聴などの幻覚からくると思われる暴力もみられました。

デイサービスの送迎車にすんなり乗っていただける日もあれば、暴れてしまい、送迎車にすら乗っていただけない日もありました。

安男さんに対する音楽療法は、安男さんがデイサービスに通い始めてしばらくしたのちに開始しました。

デイサービス利用開始後、すぐに始めなかった理由は、本人がデイサービスに慣れるまでの間は、入浴や排せつなど、基本的なケアを受けていただくことを優先するべきであったからです。

また、音楽療法をすることになった理由は、安男さんが若いころから歌を歌うのが好きだった、というご家族からの情報があったこと、よく鼻歌を歌っていたこと、デイサービスに通うことに、慣れてきていただいていたことからでした。

安男さんに対する音楽療法の事例その1:集団セッション


安男さんに対しては、小さなグループでのセッションと、個別でのセッションが行われました。

小さなグループでのセッションを行う際には、安男さんが立ち歩いてしまったり、何らかの理由で怒り始めてしまったりしたときに、私以外のスタッフに対応してもらうことはあらかじめ決められていました。

その決まりがない状態でセラピストである私自身が対応してしまうと、他のクライエントの活動までもがストップしてしまうからです。

10人前後のグループでセッションが行われ、セッションの流れは通常通りに行いました。

季節の歌を歌い、体操を取り入れ、楽器演奏をするといったセッションです。

安男さんは、歌詞を正確に歌うことはまれでしたが、歌詞がわからない部分もメロディーはわかっていることが多々ありました。

体操については、こちらの説明を理解することが難しく、参加することができませんでした。

楽器演奏に関しては、本人の状態を見て楽器を選び、手渡していました。

というのも、安男さんは、こちらが予期しないきっかけで怒ってしまい、手にとれるものを投げてしまうような状態だったからです。

そのため、比較的穏やかに過ごせているときに限り、投げてしまっても問題が生じないような軽くて丈夫な楽器を渡して演奏していただくような形でした。

このように、集団でのセッションでは安男さんが十分に参加できる場面が少なく、効果が得られると実感できるセッションではありませんでした。

安男さんに対する音楽療法の事例その2:個別セッション


安男さんに対しては個別でのセッションも行いました。

ただし、個別セッションについては、ケアスタッフの人員不足という理由で、定期的に行えるものではありませんでした。

また、セッションにかけられる時間についても限られており、45分間で行う集団セッションに比べると短い15分間程度のセッションを行っていました。

個別セッションは、安男さんが集団セッションの中で比較的歌うことができていた曲を中心に、2、3曲を選ぶ形で行いました。

主に、童謡や唱歌といった安男さんが子どもの頃から慣れ親しんだであろう曲が多くを占めました。

その他にも、歌手の北島三郎さんの曲が好きだという、ご家族からの情報をもとに、北島三郎さんの曲をとりいれることもありました。

童謡や唱歌については、集団でのセッションと同じように、季節の曲を取り入れました。

体操や楽器演奏については、深呼吸や伸びをしていただくなどの簡単なものは取り入れましたが、最小限にし、歌唱によるアプローチに徹しました。

歌う際は、かなりテンポを落とし、本人が歌詞を思い出しながら歌えるよう工夫しました。

歌を歌っている際は、穏やかな表情を見せてくれることも多く、その効果を感じられることもありました。

まとめ

  1. セッション時のクライエントの状態として、安男さん(仮名:75歳)は、レビー小体型認知症のため、幻視やパーキンソン症状がみられ、暴力もある状態でした。
  2. 集団でのセッションを行いましたが、安男さんの状態に合わせることができず、効果はあまり感じられませんでした。
  3. 個人でのセッションでは、安男さんが歌える曲を選ぶことができたこともあり、穏やかな表情を見ることができるなど、効果を感じられる場面もありました。

安男さんに対する音楽療法は、安男さんが特別養護老人ホームへ入所することとなり、終了してしまいました。

安男さんに対する集団でのセッションは、直接的に効果があったとは言えず手ごたえがあまり感じられないものでしたが、受動的音楽療法としての効果や、安男さんが歌える曲を知ることができたという点でのメリットはありました。

限られた時間でのかかわりの中で、少しでも多く、クライエントに有益な時間を得ていただけるといいですよね。