どんな曲が世界一難しいのか?名ピアニストのハンス・フォン・ビューローをして最難曲と言わしめたのが「イスラメイ」です!非常に弾きにくく速いパッセージが山盛りなのです。かのM.ラヴェルの超難曲「スカルボ」は、この作品の難易度を超えることを目標の一つに掲げて作曲されたと言われています。

さて、全音の難易度表で言えば当然Fに相当しますが、実際には平均的なF難易度を大きく上回っていることを覚悟してください。この曲に挑戦するにはかなりの技術と根気が必要です。

楽譜については、IMSLPのものよりHenle版をお勧めします。調号が非常に多く読み落としやすいので、隙間を多めに空けたレイアウトになっている版の方が無難です



バラキレフ「イスラメイ」の弾き方


はじめに両手で高速の単音パッセージで主題を提示します。楽譜上は単純なのですが、和声に頼ることができないせいで音楽的な表情がつけにくい部分です。わずかにテンポが前のめりになってしまったり、同音連打がすっぽ抜けてしまったりという事故も起こりやすいので注意が必要です。

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民族舞曲が基になっているので、リズムの特徴を強調しなくてはいけません。特に赤い印をつけた箇所を弾んだアクセントで弾き、それ以外の左手は軽く弾くべきです。

また、右手は2声で書かれているのでそれぞれに分解して練習しましょう。手首がどのような動きをしているのかチェックしましょう。

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両手で交互に連打を弾いて、しかもピアニッシモでメロディーを持続させるので、メロディーが聴こえるようにするだけでも一苦労の箇所です。赤い線で結んだ部分がメロディーです。まずはこの音だけを明晰な発音で弾けるように練習しましょう。

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この部分から音が増えて本格的に難しくなっていきます。夢中で練習しているとテンポ感が狂いやすいので、メトロノームを使って正確に練習することをお勧めします。

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この箇所ではペダルが重要です。音が混み入っているため踏み替えたくなりますが、正確な音価を再現するために、少しずつペダルをあげて薄くするなどの工夫をしましょう。

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一見難しくなさそうですが、アーティキュレーションを正確に弾くのが難しい部分です。個性の出しにくい箇所ですが、内声部のバランスをどうするかで自分らしさを表現できます。

また線でメロディーをなぞった部分は大半を親指で弾くので、メロディーだけを抜き出した練習が不可欠です。

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フォルテフォルティッシモの部分は全体がうるさくなってしまいがちです。左手に大きな跳躍があるので、裏拍にあたる♭B音は軽めに弾くようにしましょう。

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この部分はOssiaかオリジナルの選択が悩ましい部分です。Ossiaの方が推進力を得られますが、オリジナルだと右手のテンポが走ってしまうのを防止し、音楽の表情をより効果的に再現できる可能性を秘めています。(大抵はOssiaを演奏します。)

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ここは表情豊かに弾く部分で、ある程度自由に弾いていいと思います。分散和音にしなくていいように右手で音を取ることをお勧めします。また、このように長いフレーズでは装飾音やリズムが複雑になっている箇所に山場がきているので、赤丸の部分がフレーズの頂点だと思われます。

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このように弾きやすく音の多いパッセージはやかましくなってしまいがちですが、とても軽く弾くようにしましょう。

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Tempo Iと書かれていますが、冒頭よりははるかに難易度の上がっている箇所です。本来はこの箇所が弾けるテンポで全体を構成するべきですが、それではあまりに遅くなってしまう危険性があるので、多少この箇所が遅くなるのは仕方ないかもしれません。

青丸の部分は、特に難しいパッセージです。非常に崩れやすいのでゆっくり丁寧にさらうことはもちろんですが、ステージ上で崩れた時のために1.5倍から2倍のテンポで練習して、事故に備えることも必要です。

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ここはOssiaをお勧めします。弾きやすさと演奏効果の両面でOssiaが優れています。

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リャプノフ編曲のオーケストラ版や、超一流ピアニストたちはとても速いテンポで弾いていますが、非常に難しい部分ですのでAllegro vivoに聴こえるギリギリの遅さで弾く方が良いと思います。

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この曲で一番かっこいい疾走感溢れるコーダです。メロディーが途切れないように注意しましょう。音列をきちんと把握さえすればコーダはそれほど難しくありません。ただし、速ければ速いほど演奏効果が高いことも事実で、テクニックのあるピアニストほど速く弾いています。

まとめ

この曲はあまりにも難しく、完璧に演奏している人がかなり少ないようにも思います。思い切って弾いてしまえば、ある程度のミスには目を瞑れるような少々大雑把な作品とも言えます。ぜひ1年計画くらいで挑戦してもらいたい作品です。