最近、音楽療法は、多くの分野で人気のセラピーになりつつあり、注目を集めています。
そんな中、音楽療法士の資格を持たない方が、音楽療法を行っていることもあるようです。
音楽療法士の資格を持たない方が、音楽療法を行うことには、何か問題があるのでしょうか?
そのデメリットについても考えていきます。

■ 目次

音楽療法士の資格とは?

日本で活躍している音楽療法士が持っている資格は、認定音楽療法士、音楽療法士1種資格、または、自治体やNPOなどが発行している資格などです。

認定音楽療法士は、日本音楽療法学会が認定した人に与えている資格で、音楽療法士1種資格というのは、全日本音楽療法養成協議会が認定している資格です。

いずれの資格も、学校で学んだり、講義を受け、なおかつ実践で腕を磨いたりしたのちに、取得することができます。

ただ、音楽療法士の資格は、国家資格などではなく、現在のところ、資格がなければ行ってはいけない、といったような決まりもありません。

つまり、音楽療法は誰が行ってもいいのです。

音楽療法士以外が音楽療法を行うことの問題点


音楽療法士の資格を持たない人でも、自由に行うことのできる音楽療法ですが、その問題点が指摘されることもあります。

問題になるのは、音楽療法の質が保証されないという点です。

音楽療法士の資格を持っている方の中でも、知識や技術力の差があることは指摘されていますが、資格を持つ方と持たない方の間には、大きな開きがあることが多いのです。

中には、音楽療法の理論を勉強し、何年も実践を行い、知識も技術も持ち合わせているけれども、音楽療法士の資格は持っていないという方もいます。

ですが、音楽療法の理論を少しだけ取り入れたレクリエーションを行い、それを音楽療法であるとし、その音楽療法を受けた方をがっかりさせてしまう方もいるのです。

この問題を防ぐために、音楽療法士の資格を業務独占資格に、国家資格にしてもらいたいと、日本音楽療法学会は国に働きかけているのです。

医師や看護師が、国家資格を持っていなければ医療行為を行えないのと同じように、音楽療法士という国家資格を持っていない人が、音楽療法を行えないようにしようとしているのです。

そうすることで、音楽療法は一定以上の知識や技術を持った方のみが行うことのできるセラピーとなり、その質が保たれます。

その結果、音楽療法を受ける側の方は、安心して音楽療法を受けることができると考えられています。

音楽療法士以外が行う音楽療法を受けることのデメリット


音楽療法士の資格を持たない方が、音楽療法の理論をレクリエーションに取り入れることはできます。

それを、大々的に「音楽療法を行っている」と宣伝し、それを目当てに人が集まったとします。

この音楽療法的活動に参加した人が、「自分は音楽療法を受けたのだ」と思ってしまう。

このことに問題があります。

音楽療法は、理論に基づいたプログラムの中で行われるセラピーです。

でも、それだけではありません。

セラピーの前に、クライエントの障がいやセラピーを受けることになった背景などの情報を知っておくことからはじまります。

また、セラピーが終わった後に、音楽療法士は、クライエントに起こった変化などを捉え、反省点などとともに記録に残します。

それをまた、次のセラピーに活かす、という一連の作業を繰り返しているのです。

「音楽療法的活動」や「音楽療法を活かしたレクリエーション」と「音楽療法」は厳密にいえば異なるものなのです。

でも、現在の日本では、同じように扱われているため、自分が実際に受けている音楽療法が、音楽療法士によるセラピーなのか、音楽療法を少しでも勉強したことのある人が行っている活動なのかがわからないのです。

もちろん、音楽療法的活動や音楽療法の理論を活かしたレクリエーションで楽しい時間、充実した時間を過ごすことはできます。

そのことが、活動に参加した人に悪影響を及ぼすということもほとんどないと思います。

ですが、本来の音楽療法に参加したとは言えない、ということがデメリットであるともいえるでしょう。

まとめ

1. 音楽療法士の資格とは、日本音楽療法学会や全日本音楽療法学会などが認定している、民間資格です。
2. 音楽療法士以外が音楽療法を行うことの問題点は、音楽療法の質に差を生むことにあり、音楽療法士や音楽療法に対する信頼や信用を損なう恐れがある点です。
3. 音楽療法士以外が行う音楽療法を受けることが、クライエントに悪影響を及ぼすことはほとんどありませんが、本来の音楽療法に参加しているわけではないという点はデメリットになると考えられます。

音楽療法的活動も音楽療法の理論を活用したレクリエーションも、参加したメンバーが楽しい時間や充実した時間を過ごすことができれば、それはいいことだと思います。
ですが、そのことと音楽療法を受けるということは、やはり違いのあるものです。

だれもが、音楽療法を本来の形で受けることができるようになれば、さらに音楽療法が見直され、普及していくかもしれませんね。


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