こんにちは!藤原歌劇団所属、ソプラノ歌手の泉萌子です♪

「芸能人は、歯が命!」というフレーズがありましたね。
歌い手にとっての「命」と思われるものはやはり「喉」といったところでしょう。

近頃ではオペラ歌手といえども、歌声以外にもキャラクター性やルックスまで求められるようになってきてはおりますが、まあ、それは置いておいて…笑

確かに、お客様から「普段はどのような喉のケアをされてるんですか?」と訊かれることがあります。

歌い手仲間が集まれば、マヌカハニーがイイらしい、とか、スロートコートというお茶が…、とか、本番前に自分は酸素カプセルに行く!などと、「喉に良さげなもの談義」で花を咲かせることもしばしば。

私はというと、特にそういったモノにお金をかけるよりかは、食べ物や飲み物に少しでもお金をまわしたいな…などと考えてしまいます。
精神的に満たされた状態であることも、いい歌を歌うために必要…という言い訳なのですが。笑

しかしそこまでズボラな私でも、一応は声楽家の端くれ。
声の調子次第ではお仕事に支障を来す場合がございます…

のど飴ももちろん有効、とは思われますが…
そんな私が普段から、喉のために最低限気にかけて行っていることをご紹介いたしましょう。
声は誰しもが毎日発するものですので、歌い手ではない方でも参考になるかと思われます。

充分な睡眠をとる


歌を歌うとき、その音楽を奏でる楽器にあたる部分はどこでしょう?
喉!と答えたあなた、半分正解です。
もちろん喉が人間の発声器官ですから、なくてはならないものですよね。
間違いではありません。

もっというと、「身体全体」が完全正答になります!

管楽器に例えるとわかりやすいのではないでしょうか。
トランペットやチューバなどには、奏者が口を当てる「マウスピース」という部分があります。
ここが人間でいう「喉」の部分になります。
しかしこれだけでは、美しい音色を奏でることができません。
楽器にとって共鳴(響き)をつくる「胴」の部分、これが人間では身体全体にあたります。

普段から身体をよく休ませること。それは大切な喉を守るために必要不可欠なことです。
私も、寝不足のときに歌うと思うように声が出ない…と感じます。

どんなに忙しいときにでも、寝る時間を確保するために逆算した時間の使い方をすれば、意外と起きている間の効率も上がるものですし、ね!

しっかりと保湿する


乾燥した場所で声を出そうとすると、声が裏返ってしまうことがあります。
「喉が渇いた~」というように、身体の水分量や周りの環境に対し、喉というのは非常に敏感に反応する器官でもあります。

喉のなかで音を発する場所である「声帯」は、粘膜に覆われています。
この粘膜に適度な湿り気がないと、この声帯をうまく振動させることができなくなってしまいます。

特に冬場のコンサートホールなどは、暖房の具合やお客様が厚着でいらっしゃるということもあり、非常に乾燥しています。
こういった場合、私たちはとても神経を使います。
歌っている途中で喉が「ケコッ」となってしまうことは、歌い手にとって恐怖以外の何物でもありません…!
あまりにも乾燥が著しいときには、霧吹きなどで顔の周辺や髪などに水を吹き付けてから舞台に出るようにしています。
これは、大学在学中に先輩から聞いた小技です♪

また普段から、こまめに水分を摂ること。
特に本番の際、私は計1ℓ以上の水を楽屋に持ち込むようにしています。
緊張すると、喉も乾きやすくなりますしね。

マスクをするというのももちろん効果的です。
大学受験シーズン、音大でマスクの集団がいれば、それはだいたい声楽の受験生、という話は本当でした。笑

加湿器も有効ですね。
ただ、わざわざ買うのは面倒…という方は、適度に濡らしたタオルをハンガーにかけておくだけでも充分です。
ホテルなどではフロントで加湿器を無料貸し出ししてくれる場合があります。
そちらで借りるもよし、しかしそれがかなわないとき、私はだいたい、寝る前に浴槽に熱いお湯をはって、ドアを開けたままにしてから寝るようにしています。
目覚めの喉の具合が非常にラクです!
お湯を沸かした給湯器のフタを、電源を落としたのちに開けたままにしておく、というのもよく使う手段です。


ただ、保湿に関して注意しなければならないのは、「しすぎてはいけない」ということです。

大学在学中のある梅雨の時期、私はひどく首を寝違えてしまいました。
これが本当に重症で、首が痛く声も出せないほどになってしまったため、紹介してもらった鍼灸院を受診し、どうにか快復しました。

そこでお医者様に言われたことは、「東洋医学において、湿気というものは寒さの次くらいに筋肉に悪影響がある」ということです。
なんでも、過度な湿気により、筋肉の中に乳酸がたまる…とかなんとか。
私は医学に詳しいわけではないのですが、なるほどな~と感心しました。
先ほど出てきた声帯というのは、いわゆる腱のようなものです。
その腱自体は、単独で動かすことができません。
声帯の周りの筋肉、喉の筋肉を動かすことにより、声を出すことができるのです。
「なんだか今日は声がでにくい…」と感じたとき、声帯ではなく喉の筋肉や周辺の首の筋肉になにか問題がある場合があります。
本当に、人間の身体って、デリケートですね!

あまりじめじめしたところは、衛生的にもよくないもの。
声帯のために適度に潤いを。でも筋肉のために、ほどほどに、を心がけましょう。

声を出す前に、自分の体調を把握する


さてこれから歌うぞ、と思い立ったとき、早速声を出す…
のではなく、自分の身体が現在どういう状況か、改めてみてみましょう。

前述でも触れましたが、身体そのものがあなたの楽器です。
なんだか体調が優れないな、と思ったなら、練習もほどほどに。
身体のどこかしらに不調がある場合、全身をうまく使えないため、普段のように歌えず、その分、喉に負荷がかかってしまうのです。
私もたまに胃腸の調子が悪くなるのですが、そういったときは100%の歌が歌えていない、と感じます。
脚などに筋肉痛がある場合もそうです。
身体を支える重心を支えることができず、声が変わってきます。

人体って、微妙なバランスで成り立っているなぁ、とつくづく思います。


また、あまりひどいときには潔く歌わない、ということも選択肢に入れましょう。
特に女性の場合、生理中は要注意です。
生理の期間、声帯は分厚く充血し、動きが鈍くなるそうです。
女性の歌手としては、非常に悩ましいことです…
しかし、重症化すると取り返しのつかないことになることも!
無理をすると、結節やポリープを作る原因となってしまいます。
声を出すこと自体、しばらくは禁物…という、哀しい事態になりかねません。
思い切って休む!という選択は、身体のためにも必要なこと。
少し辛抱して、体調が回復するのを待てば、気持ちよく歌えますよ♪

しっかりと発声練習をする


体調も万全!早速オペラの大曲を歌うぞ~!!
…というのも、危険なものです。
あなたの身体は、喉はしっかり「起きて」いますか?

喉は、スロースターターです。
まず朝起きて第一声、「おはよう」を百点満点のいい声で言える人はいるでしょうか?
いくらプロの歌手でもそればかりは無理でしょう。
(起き掛けでもプロ根性を絶やさない人はいるかもわかりませんが…)
一般的に、しっかりエンジンをかけてやらなければ、身体も喉も起きてはくれません。

頭→身体→喉の順に目覚めるものだと思いましょう。
身体は起きていても頭は数時間起きてないという私のような者もおりますが…笑

朝、目覚めてからおよそ3時間で声は完全に起きるといわれています。
このことにより声楽家は、「午前中の本番」というものを避けたがる傾向にあります…
ということはさておき。

車は、寒い中いきなり走らせることはできませんよね。
私の故郷も寒冷地ですので、冬場はしばらくエンジンの空ぶかしをさせています。
管楽器も、楽器が冷えているといい音が出ませんので、待機中には息を通して温めるなどしています。

喉を起こしてあげるためのエンジン掛け、これが私の考える発声練習というものです。
ここには、簡単なストレッチなどの運動も含まれます。

伸びをしたり、肩や首をまわしたり、呼吸を整える訓練をしたり…
そして声を出すときはいきなり大きく出すのではなく、小さい声量からスタートする。

そうしているうちに身体も喉もエンジン全開となり、楽器として最高のパフォーマンスをみせてくれます。
こうした地道なプロセスを踏まないと、いい声で歌えないばかりか、喉の故障の原因となりうるのです。

歌った後、喉に刺激のあるもの・ことは避ける


歌った後にも、気にかけた方がいいことがあります。
練習や本番の直後に、喉はかなり疲弊しています。
そのように弱くなった喉は、しっかりといたわってあげるべきだと思います。

極端に冷たい飲み物を大量に飲んだり、逆に極端に熱い飲み物を飲んだりするのはオススメできません。炎症の原因になります。
最近はやりのエクストラコールドの飲み物など、直後には喉によろしくないと思われます。美味しいんですけどね。笑

とても辛いものをいきなり食べるのも避けた方がいいでしょう。
私の知り合いで、練習の後に激辛のキムチ鍋を囲んで宴会をしたところ、数か月耳鼻咽喉科に通う羽目になったという人がいます。

いきなり大声で話すのも避けたいところ。
また、空気のよどんだ場所もなるべくいかない方がよろしいかと思われます。
どうしてもいかなければいけない場合、マスクの着用が有効ですね。

ですが、このあたりは個人差もあります。
私の場合、あくまで歌った「直後」にこういったものは避けるようにしています。
このようなことを全く気にせず、キンキンに冷えたビールを飲みながら歌っても平気な人、また、換気のなされていない空気の悪い場所でも咳一つでない、という人などもいます。
反対に、普段から辛いものは口にしない、アルコールも摂らない、という方もいらっしゃいます。

それぞれの楽器=身体に合ったクールダウンでいいと思います。

まとめ

自分のことをズボラな性格だと思っておりますが、文章にしてみると意外と気にかけていることって、あるものですね。笑

でも、明日からと言わず今からでも、実践できる簡単なことばかりだと思います。

・充分な睡眠をとって、楽器である大切な楽器である自分の身体を休ませる。
・保湿はしっかりと。でもほどほどに。
・自分の体調を把握し、不調の際は休むこと。
・歌う前には、適度に身体を動かしながらの発声練習でエンジンを掛ける。
・歌った直後に刺激のある飲み物や喉に負担になるようなことは避ける。

これだけ守れば、健やかでのびのびとした歌い手LIFEを送れることは間違いないと思われます。

練習の休憩時間、のど飴を配って歩くコーラス仲間に「○○さんて、とってもいい声ね!なにか声のためにしていること、あるの?」と聞かれた際にも、「もちろん!」と自信をもって答えられる…なんてこともあるかもしれません。笑

もっと専門的なことを知りたいという方は、音声外来の先生に聞いてみる、というのがいいでしょう。
やはり喉のプロのご意見が一番ですので!

では♪