《2つのラプソディ》第1番op.79-1は、中学生や高校生がピアノの発表会で取り組むことが多い作品です。ショパンのエチュードの導入あたりと並行して勉強する人が多いように思います。全音の難易度レベルでいえばE(上級)あたりでしょう。


ブラームスの入門編のようなこの作品ですが、発表会で弾けば一目置いてもらえること間違いなしの曲です!演奏効果も高く、オクターヴと和音の掴み方さえ習得すればなんとかなります!



名作揃いの作曲年代

この曲はop.79ですが、作品番号が近いところには《8つのピアノ小品》op.76、《ヴァイオリン協奏曲 ニ長調》op.77、《ヴァイオリンソナタ第1番「雨の歌」》op.78という、超名曲が出揃っています!非常に充実した時期の作品ということがわかります。

ブラームスは若い頃に「ピアノ・ソナタ第1番」op.1、「ピアノ・ソナタ第2番」op.2、「ピアノ・ソナタ第3番」op.5という3曲の大規模なピアノ・ソナタを作曲し、「シューマンの主題による変奏曲」op.9、「自作主題による変奏曲」op.21-1「ハンガリーの歌の主題による変奏曲」op.21-2、「ヘンデルの主題による変奏曲」op.24、「パガニーニの主題による変奏曲」op.35を書いた後は、ピアノ独奏曲をop.76に至るまで書いていません。

op.35以前は比較的規模の大きなピアノ曲が多かったブラームスですが、op.76以降のピアノ曲は小規模で、より内省的な性格を持った作品が多くなっています。唯一の例外が最大規模のピアノ協奏曲の1つである「ピアノ協奏曲第2番」op.83ですね。

緊迫感の溢れた曲想

非常に緊迫感のあるドラマティックな作品です。私はこの曲を高校生の時に勉強しましたが、M.アルゲリッチのCDを初めて聴いた時にはとんでもない難しい曲だと感じたのを覚えています!


しかし実際に練習を始めると、譜読みもしやすく、指返しも少なくて手のポジションが安定するため非常に弾きやすいことに気がつきました。ポジションが取りやすく弾きやすいということは、強い音が鳴りやすく、速度を上げる事も出来、また自由自在に弾くことが可能ということです。それらも難しそうに聴こえる一つの要因だと思います。

さて、弾くことが比較的たやすくて派手に聴こえる作品では、勢いに任せて弾いてしまい、アーティキュレーションや音のバランスが悪くなった演奏をよく耳にします。

特に、冒頭の3小節に渡るフレーズですが、手のポジションが取りやすいために大雑把な動きにならないよう注意しましょう。最小限の動きを利用して、スラーの末尾の音まで繋げましょう。とりわけ、親指の長い音符(Fa#-Mi#-Mi-Re-Do#)の音が揃うようによく聴きましょう。

続く箇所では、シンコペーションによって緊張感が持続するように書かれています。

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絶えず音楽の推進力を保つように意識しましょう。右手小指を少し強めに弾くと良いと思います。フォルテの箇所は音域も広く、和音の配置的に音が鳴りやすいのでフォルティッシモになってしまいがちです。やや音量をセーブしましょう。

次はブラームスの後期作品らしい趣で、声部が多く、ややぼんやりした独特の雰囲気に満ちています。

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4声で書かれているので、ソプラノ(最高音)とバス(最低音)に力点を置いてバランスをとりましょう。ペダルを多用したくなる部分という事もあり、右手の内声をいい加減に弾いているケースがとても多いです。楽譜通りの音価で完全に弾くようにしてからペダリングを選びましょう。

緊迫感のあるロ短調から、メランコリックな曲想のニ短調の部分へ移ります。

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Ra-Re-MiのMiの音には、1つの音なのにクレシェンドとデクレシェンドが書かれていますね。ペダルの深さの調節と、左手の八分音符を含めた音量のバランスを取る事で求められている演奏効果を生み出せます。何より大事なのは小手先の技術ではなくイマジネーションです!ブラームスは常にオーケストラの響きをイメージして作曲していたので、オーケストラ作品の演奏を参考にして響きを追求しましょう。

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フォルティッシモが初めて書かれている部分です。ここでは存分に楽器を鳴らしましょう。特に2回目の音階がより劇的になるように、全ての音に重みを乗せたまま速く弾けるように練習しましょう。

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この箇所がおそらく一番難しいのだと思います。実演ではここで失敗する人が非常に多いのです。問題はピウ・フォルテの部分ですが、ここは左手のアルペジオの音を右手でひきましょう。右手は少し忙しくなりますが、難易度は格段に下がります。繋がっているように聴かせるために、ペダルが拍の頭にぴったり当たるように練習しましょう。

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これまでと対照的な、天上的な美しさを備えたロ長調の部分です。ここにはテンポの指示は書かれていないため、基本的にはロ短調部分と同じテンポで演奏します。ただし、Meno agitatoと書かれているため、ごくわずかだけ遅くして甘い雰囲気を演出してもいいかもしれません。

当然ですが、どこにもアクセントがつかないように、そしてフレーズが非常に流暢に聴こえるように片手の練習をよくしましょう。特に左手など、裏拍はできるだけ小さな音で揃えるよう努力しましょう。

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最後の部分は一見難しそうではないのですが、意外とポジションが安定せず弾きにくいのです。元のテンポよりもはるかに遅く弾いてみて、丁寧にポジションの確認をしましょう。音楽的には曲を構成していた要素を振り返っているだけなので、新しいアプローチは必要ないと思います。

まとめ

テクニック的なことよりも、フレーズの持続や音量のバランスなどが難しいということがわかっていただけたかと思います。このような作品に取り組んで、どう弾いていいかわからなくなった時は、バスだけの練習と、旋律だけを歌わせる練習の2つをやってみてください。問題が浮き彫りになり、解決しやすくなると思います。