ブルグミュラーの18の練習曲『家路につく牧童』、伸びやかで情緒的な旋律が印象的で、とても心が癒される作品の一つです。そして題名に『牧童』とあるだけに、伸びやかさの中にどこか無邪気さも感じられる一曲です。

「そろそろ18の練習曲にも挑戦したいなぁ、でも何だか難しそう」と思っている方もおられるかと思います。そんなときはとにかくピアノに向かってみましょう。少しずつでも音を鳴らせるようになれば、不安はあっという間に吹き飛んでしまいます。さっそく練習を始めてみましょう!


こんにちは、ピアノ弾きのもぐらです。畑の地中からピアノの練習方法を発信しているもぐらです。最近は朝と夜の寒暖差が大きくなってきましたね。私はそろそろ冬ごもりの準備をしようかどうかと迷っています。ちなみに一応もぐらですが、冬眠はしないもぐらです。冬でもちゃんと起きていますよ!

大事なのは難易度だけではない!


さて、本題に入ります。この曲は難易度的にはわりと簡単だと言えます。ブルグミュラーの25の練習曲やバイエルをある程度マスターできていれば、難なく弾けるかと思います。しかし、「弾けた!案外簡単だった!」で終わらせるにはもったいないです。というのは、この曲は確かにそれほど難しくはないのですが、弾き方次第で雰囲気や聴く側の印象をどのようにも変化させることができるからです。

そのためには、曲から伝わる自分だけのイメージを掴むことが重要になってきます。まずは楽譜をよく見渡しましょう。そしていろいろな指示記号や調の変化を読み取りましょう。

「実際に弾いてみなきゃイメージが湧かないよ!」ということであれば、まずは右手だけでもいいのでゆっくりひと通り弾いてみましょう。そのときは音を間違えてもテンポに乗れなくても大丈夫です。

ここは上手に弾くことよりも、あくまで「曲全体のイメージを掴む」という段階です。何となくでも良いので、自分なりのイメージを予め思い描いておきましょう。


わかりやすい構成であるからこそ工夫が大事!

では、まずは下記の動画をご覧ください。



この曲の構成はとてもわかりやすく、そして同じようなフレーズの繰り返しが多いということがわかります。練習をしていくにあたっても、構成ごとに少しずつ練習していくことが一番やりやすい方法かと思います。
ですので、この記事では以下のように、一曲をいくつかのセクションに細切れにして説明していきます。

セクションA1(最初~0:28)
セクションB(0:28~0:38)
セクションA2(0:39~0:49)
セクションC(0:49~1:16)
セクションA3(1:16~1:33)
セクションD(1:33~終わり)

※カッコ内の時間は動画に沿った時間です。動画を視聴し、予め曲の響きや構成ごとの変化を掴んでおくだけでも練習効率はアップするかと思います。

では、さっそく各セクションをご説明していきます!

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションA1 ~強弱に気をつけよう~

セクションA1では強弱の変化の付け方で印象が変わってきます。音一つ一つを丁寧に弾いていきましょう。

※ 『dolce』の意味は『優しく』
※ 『Allegretto.』の意味は『やや快速に』
※ 『dimin. e riten.』の意味は『音を小さくしながら遅く』

上記の譜面を見て「ん?」と疑問に思われた方もおられるのではないでしょうか。2小節目と3小節目をご覧ください。スタッカート(意味:音を短く切る)とペダルの指示が同時にあります。何だかちょっと戸惑いますよね。

ですがこの部分については、楽譜のバージョンによってはペダルの指示が無い楽譜もありますので、スタッカートで軽やかさを出したいという方ならペダルは省略し、あるいは逆にペダルを踏んで響きに厚みを持たせたいという方ならスタッカートを省略する、というように考えても良いかと思います。

ただ、いずれにしろこの部分は控えめな音量で鳴らせるように心がけましょう。そして左手の和音はどの音も均等に鳴るように、片手練習の段階でしっかり練習をしましょう。

※ 『grazioso』の意味は『優雅に』
※ 『a tempo』の意味は『元の速さで』

この部分の右手ですが、装飾音が出てきます。この装飾音はあくまで『ミ』の音を飾るという意味ですので、さりげなく軽やかに弾きましょう。「さりげなく」といっても決して重要ではないという意味ではありません。このような一つ一つのさりげない音というのも、曲の印象を左右します。(0:08~)

またペダルについてですが、これもまた楽譜によって表記が若干違います。上の譜面では3拍目を少し過ぎたところでペダルを離すように指示がありますが、楽譜によっては3拍目ちょうどで離すというものもあります。
ですので、ペダルは基本的に自分でしっくりくるような踏み方が良いかと思います。

ちなみに3拍目を少し過ぎたところでペダルを離した場合は、情緒的で柔らかい印象の響きになります。一方、3拍目ちょうどでペダルを離した場合は、どちらかというと軽やかさや無邪気さが強調されるといった印象になります。それぞれを試してみるというのも面白いかと思います。

☆セクションB ~いろいろな解釈がある~

セクションBは少し物憂げな雰囲気に変わりました。ですが、物憂げな雰囲気の中に牧童のはつらつとしたエネルギーのようなものも感じられます。(0:28~)


このセクションBの特に左手ですが、重きをおくのは1拍目と判断するのが自然かと思います。

ちなみに前のセクションA1の左手については、いろいろな解釈があるかと思います。これは私の個人的な解釈ですが、セクションA1は1拍目よりも2拍目に重きを置いたほうが自然な気がします。

おそらく装飾音の位置によって、左手において重きを置くべき場所も変わってくるのではないかと私は解釈しています。この曲の場合は、右手に装飾音のある箇所の左手にアクセントがつきやすいような気がします。

そして、セクションBにお話は戻ります。右手については、基本的にスタッカートで弾くように指示がありますが、このスタッカートの弾き方もまた、曲の印象を大きく左右します。そして、ここでもペダルとスタッカートが同時に指示されています。

ペダルで音の伸びを強調させてスタッカートは控えめにするか、それともペダルをあまり多用せずスタッカートを強調させるか、ここもなかなかに個性が出る部分です。

ちなみに私はこの部分を解釈する際、セクションA1との雰囲気の違いを表現したいと思っていたので、セクションA1とは真逆の解釈ということで落ち着きました。つまりはペダルでもスタッカートでも、どちらを強調しても自由ということです。
大事なのは「こういうふうに弾きたい!」という展望をしっかり持つことだと思います。

※ 『riten.』の意味は『だんだん遅く』

この部分は、16分休符に注目しましょう。この休符は譜面上の表記では確かに16分休符ですが、私としてはそのまま16分休符ですんなりと弾くと、何だか素っ気ないような雰囲気がしてしっくりこないので、この休符の上にフェルマータ(意味:音または休符を延ばす)を書き足したいところです。(0:36~)

ですが、もちろん「いや、ここにフェルマータは要らないよ、楽譜の指示通り軽やかに弾こうよ!」と思われる方もおられるかと思います。このあたりの解釈というのも、弾き手の好みというか個性に委ねられる部分ですので、弾き方は十人十色だと私は考えています。

ただ、ここは次のセクションへの変わり目ですので、抑揚については変わり目として不自然にならない程度につけることが望ましいと言えます。

☆セクションA2 ~繰り返しでも気を抜かない~

セクションA2はセクションA1の繰り返しです。セクションA1のときの雰囲気が再び戻ってきたといった印象ですが、ここでも気を抜かずに丁寧に表現していきましょう。(0:39~)

ここは、無理に特別大きな変化をつける必要はそれほどありません。ただ、前のセクションBでの雰囲気を引きずらないことがポイントかと思います。つまり、メリハリを適度につけることが大事ということです。

☆セクションC ~思いきり表現しよう~

ご覧の通り、セクションCでは調がハ長調に変わります。(0:49~)
ここは牧童の若々しさが一気に溢れ出てきたかのような雰囲気です。そしてここは曲の中でも最も盛り上がる場面です。エネルギッシュに楽しく表現していきましょう。

※ 『energico』の意味は『力強く』

上記でも申しましたが、ここからはハ長調に変わりました。ちょっと戸惑うかもしれませんが、『ファ』の♯が取れただけです。練習を重ねることでだんだんと調の変化にも慣れてくるかと思います。

「慣れだとか、そんな適当なこと言って!」と不安に思われる方もおられるかもしれませんが、慣れというのはとても大事なことだと私は思います。『慣れ』とはつまり『習慣』です。

習慣というのは、ピアノに限らずどのようなことにも通じますよね。いろいろな技術の習得も、結局は「練習する」という習慣があっての成果です。とにかく慣れるまで粘り強く練習しましょう。

そしてこの左手についても、転調というきっかけで「また和音を一から読まなきゃ……」と突然モチベーションが下がってしまう部分ではないかと思います。かく言う私も、練習していた当時はここでよく悩んだものです。

どうしても「和音になかなか慣れることができない」と行き詰ったときには、一旦練習を中断しましょう。そして、1小節の中に出てくる和音が、一体どのような単音で構成されているかについて考えてみましょう。

例えば上の譜面にある左手の和音を一つ一つ見てみると1小節の中のすべての音が『ド、ミ、ソ』の和音を構成する音だけでできていることがわかります。つまり、いきなり和音自体を理解しようとするのではなく、一つ一つの単音として確認した後にそれを和音として理解するということです。

この方法は一見まわりくどいようにも思われます。ですが、ただ和音を丸暗記するという練習よりもこの練習方法のほうが、1小節ごとの響きや雰囲気など、曲のより深い部分まで同時に分析、発見、そして理解できるのではないかと私は思います。


そしてこの右手ですが、案外この部分は何気に難しいところだと私は思います。この右手をきれいに響かせるには、和音を均等に鳴らすことはもちろんですが、指の運びが重要になってきます。どちらかというとこの部分は、なるべく譜面の指番号に忠実に弾くというのが無難かと思います。(0:55~)

そしてこの部分は特にいろいろな音が次々に出てくる部分ですので、ペダルの踏み方にも工夫が必要です。ちなみに私はこの和音が下がってくる部分に関しては、ペダルは踏まなくても良いような気がしています。というのも、この部分でペダルを踏んでしまうと、どうしても音が濁って全体的に響きがごちゃごちゃしてしまうからです。


ここで先ほどのエネルギッシュな場面は終わり、前半の情緒的な旋律の影がまた少しずつ濃くなってきます。(1:10~)

ここでの右手と左手は、1オクターブ違いますが同じ音を弾いていきます。ここは何となく簡単そうではありますが、味気の無い演奏になってしまわないような工夫が必要です。

また、この部分には強弱記号がたくさん書かれています。この部分は少し大げさなくらい強弱の変化をつけていくことで、より旋律全体の印象を強めることができるかと思います。

☆セクションA3 ~終盤に向かうことを意識しよう~

セクションA3もセクションA1セクションA2の繰り返しです。(1:16~)
ですが、このセクションA3は曲の終盤に位置します。そのため、曲の最初にあるセクションA1、そして曲の真ん中にあるセクションA2とは雰囲気というか曲中での役割に違いがあるような気がします。

これはあくまで私個人の解釈ですが、このセクションA3というのは曲を終わりへと穏やかに導く役割があるのではないかと思います。牧童が無事、家路につけるようにあたたかく見守るような優しさを持ちながら弾きたいところですね。

☆セクションD ~両手の音をしっかり揃えよう~

セクションDはほんの数小節だけですが、曲を締めくくる大事な部分です。終わりまで気を抜かず丁寧に弾いていきましょう。(1:33~)


この部分は、譜面上の指示は特にありませんが、だんだん遅くしていくことで情緒的な響きになるかと私は思っています。この曲の全体的な雰囲気を考えると、この部分は抑揚を強めにつけても問題はないかと思います。

そしてこの部分の旋律はまるで合唱のようにも聴こえます。右手は上に上がり左手は下へと下がっていくという形のフレーズですが、この右手と左手については同じくらいの音量で弾いてみても良いかと思います。そして両手の音をしっかりと揃えて弾きましょう。

また、この部分のペダルについては、踏みっ放しでもそれほど問題はありません。フレーズが途切れない程度に踏めていれば大丈夫です。

※ 『フォルテ』に『S』がついた記号は、アクセントとほぼ同じような意味合いです。

この終わりの部分ですが、強調すべき音の指示はたくさん書かれているのですが、基本となる音の強さの表記というのは、よく見ると書かれていないことがおわかりになるかと思います。(1:37~)

この曲に限らず、譜面の中に欲しい情報が書かれていないという楽譜はたくさんあるものです。そんなときは一つ前のフレーズに戻って考えてみましょう。一つ前のフレーズに戻ってみると、次にどのように表現するべきなのかという道筋がおわかりになるかと思います。

とはいえ、この部分の考え方には正解や不正解というのはありません。ただ、これは私個人の解釈ですが、この部分はアクセントの記号が多いけれど、決して全体的にガツガツ弾いていい部分だとは考えにくいです。アクセントと言っても、少しだけ左手に重きを置くということではないかと思います。

コツを確認しよう!全体的なまとめ


さて、ここまでブルグミュラーの18の練習曲『家路につく牧童』についてお話ししてまいりましたが、いかがでしたか?

ここで、全体的な弾き方のコツを以下にまとめました。

1. スタッカートの付け方、ペダルの踏み方など自分なりに考えてみる(全体的に)
2. 同じ場面の繰り返しでも変化をつける(特にセクションA1セクションA2セクションA3
3. 転調は難しく考えなくても慣れれば弾ける(特にセクションC
4. 和音を読むのが大変なときは、まず一つ一つの単音として理解する(特にセクションC
5. 譜面に書かれていないことは、一つ前のフレーズに戻って考えると見えてくる(特にセクションD

以上の5つのコツを念頭に練習をしてみてくださいね。

この曲はわりと技術的な難易度としては簡単なほうですが、そのような曲こそ私は別の面でいろいろと工夫していくべきだと思っています。

確かに技術面でスラスラ弾けるようになることは大切なことです。しかし冒頭でも少し申しましたが、それだけで終わってしまってはもったいないと思います。技術面でスラスラ弾けるようになったら、次はその基本の形にいろいろな個性を付けていくことが大事です。

たとえ譜面には書かれていないことであっても、自分なりの感性で自由に表現することで、その曲はあなただけの曲になります。ですので、難易度にかかわらずどのような曲であっても、一曲を個性豊かに弾き込むことが大切です。

それでは練習、頑張ってくださいね!畑の地中から盛大に応援しています。

by ピアノ弾きのもぐら