よくテレビなど、日常の中で流れてくるさりげない音楽に対して「あ、この曲どこかで聴いたことがあったけど、何ていう曲だったかなぁ。」と思うこと、けっこうありませんか?

それはきっと知らず知らずのうちに頭の中に浸透して、普段は気がつかないけれど記憶のどこかで何かしらの印象を残している曲なのかもしれませんね。

そんな耳に残るような、印象的かつ子供から大人まで幅広い年齢層に愛されるピアノ曲について、難易度順にご紹介してまいります。


こんにちは! ピアノ弾きのもぐらです。
そろそろ夏も過ぎて、畑のお野菜がもうすぐ収穫を迎える頃です。この時期の畑は毎年忙しく、そして私はと言えばせっせと収穫される前の美味しいお野菜を片っ端からかじっています。秋といえば食欲の……いや、芸術の秋です!

もぐら的感覚で選ぶ! 耳に残るピアノ名曲10選

この記事では、以下の10曲について取り上げていきます。

① お人形の夢と目覚め(オースティン)
② トルコ行進曲(モーツァルト)
③ クシコス・ポスト(ネッケ)
④ ピアノソナタkv.545ハ長調第1楽章(モーツァルト)
⑤ 無言歌集より『春の歌』(メンデルスゾーン)
⑥ シチリアーナ(作曲者不詳/ピアノ編曲:レスピーギ)
⑦ 無言歌集より『狩の歌』(メンデルスゾーン)
⑧ ハンガリー舞曲第5番(ブラームス)
⑨ 幻想即興曲(ショパン)
⑩ ラ・カンパネラ(リスト)

※各曲の頭の数字が低いほど難易度は低く、高いほど難易度が高いという意味です。


では、さっそく難易度の低い順からご説明していきますね!

もぐらが語りまくる!各曲の難易度と特徴について

① お人形の夢と目覚め(オースティン)


オースティンの『お人形の夢と目覚め』は、よく発表会などで耳にすることが多く、子供に人気の曲です。私もかつて発表会でお世話になった曲で、大人になった今でもたまに弾いています。

この曲は、描写というか表現の指示がはっきりとした曲です。譜面の指示によると「子守唄」から「お人形の夢」、「目覚め」そして「お人形の踊り」という何とも楽しい場面展開が設けられています。

旋律も静かだったり活発だったり、そして華やかであったりと、本当にバリエーションが豊かなので、表現力を鍛えるにはもってこいの曲だと思います。

難易度的にはバイエルを練習中の方であれば弾けるかと思います。しかし、この曲は難易度的には簡単な曲だと言えますが、簡単であるからこそいろいろな解釈や表現を付け加えることができるので、弾く人によっていろいろな個性が表れる興味深い作品です。

また、ピアノ初心者の方には少々技巧的だと感じられるような箇所もいくつかありますが、迷ったときこそ思い切ってチャレンジしてみることも大切です。


② トルコ行進曲(モーツァルト)


モーツァルトの『トルコ行進曲』、おそらくたくさんの方々が一度は耳にしたことがあるほどの有名な曲です。テレビ番組やコマーシャルなどでも使用されることが多く、とても馴染み深い曲と言えます。
この曲はモーツァルトの『ピアノソナタ第11番kv.331』の第3楽章としてソナタの曲集におさめられています。

そしてこの曲は、当時栄えていたオスマン帝国の軍楽隊に影響を受けて作曲されたという背景もあります。オスマン帝国とは、現在のトルコの辺りです。

オスマン帝国の軍楽隊に影響を受けたというだけあって、この曲には打楽器的な雰囲気が大いにあります。特に軍楽隊になくてはならない大太鼓やラッパ、シンバルなどの存在を感じさせます。実際今でもこの曲は、しばしばマーチングバンドによって演奏されている名曲です。

難易度は、バイエルの後半あたりを練習されている方であれば弾けるかと思います。ただ、この曲は指の運びがなかなかに難しい箇所もありますので、バイエルだけでなくハノンの教則本などで音階の練習を事前にしておくと、練習しやすいかと思います。


③ クシコス・ポスト(ネッケ)


ネッケの『クシコス・ポスト』という題名だけだと、いまひとつピンとこないという方もおられるかもしれません。ですが上の動画を聴いてみてください。「あ、この曲ね!」とおそらく大多数の方々が納得するかと思います。そう、よく運動会の競技中に流れているあの曲です。

よく運動会などで流れるのは、吹奏楽版であったり管弦楽版であったりしますが、原曲はピアノ曲です。そして題名の『クシコス・ポスト』というのは『郵便馬車』という意味です。

難易度としては、バイエルの後半くらいを勉強中の方なら、しっかり練習をすれば充分弾けるくらいであるかと思います。この曲は何と言っても旋律が印象的ですので、その旋律をとにかくはっきりと際立たせることがコツです。しっかりと一つ一つの音を鳴らしていきましょう。

また、この曲は発表会などでお披露目するにはもってこいの曲です。もちろん子供だけでなく、大人になってからピアノを始められたという方々にもおすすめの一曲です。


④ ピアノソナタkv.545ハ長調第1楽章(モーツァルト)


モーツァルトの『ピアノソナタkv.545』の第1楽章、こちらもかなり耳に馴染みのある名曲です。弾く側も聴く側もテンションが上がってくる楽しい曲ですね。この曲はモーツァルトのソナタ集にありますが、全音楽譜出版社製の曲集である『ソナチネアルバム』にも盛り込まれています。

ところで、ここで少し話題が脱線しますが、「ソナチネとソナタってどう違うの?」という疑問をお持ちの方もおられるかと思います。

すごく端的に申しますと、ソナチネとは「小さなソナタ」という意味です。ここでいう「小さな」には主に「技術的な部分ではソナタほど難しくはない」というような意味が込められています。つまり一般的には「ソナタよりもソナチネは簡単」と解釈されます。ソナチネとソナタの違いとは、つまりは難易度の違いということになります。

ですが、私個人としてはソナチネもソナタも難易度の違いこそあれど、芸術性の面から見ればどちらも同じくらい素晴らしい作品だと思います。

さて、ここで話題を戻しますね。
この『ピアノソナタkv.545ハ長調第1楽章』の難易度ですが、ツェルニー30番を勉強中の方であれば充分弾けるくらいだと思います。そしてモーツァルトのソナタは他にも数多くありますが、やはりその中でもこの曲はわりと簡単なほうだと言えます。

特にソナタをまだ弾いたことがないという方は、まずはこの曲からチャレンジしてみても良いのではないかと思います。

尚、この曲については、以前私が執筆させて頂いた他の記事で弾き方のコツについて取り上げてあります。もしよろしければそちらの記事もご参照くださいね。

【参考記事】
調の変化に注目!モーツァルト『ピアノソナタkv.545第1楽章』弾き方のコツと難易度


⑤ 無言歌集より『春の歌』(メンデルスゾーン)


メンデルスゾーンの無言歌集の中でも特に有名な『春の歌』、何だかお洒落なカフェやレストランなどで流れていそうな、何とも優雅な雰囲気を感じますね。この曲に憧れて、無言歌集を練習し始めたという方々もおられるかもしれません。

この曲は題名の通り、春の麗らかな日差しや柔らかい春風を思い起こさせますが、『春の歌』という題名自体は、実はメンデルスゾーン先生ご自身が名付けたわけではないと言われています。

今でこそこの曲は「春」というイメージですが、もしかするとメンデルスゾーン先生はまったく違うイメージを持っていたという可能性も考えられます。いろいろと想像してみると、また違った奥深さを感じる一曲です。

難易度としては、ツェルニー30番に入っている方であれば充分弾けるほどです。ざっくり言ってしまえば難易度はそれほど高くはないです。

この曲を練習する際に気をつけるべきことは、始終鳴り続ける装飾音の中で旋律をしっかりと際立たたせることはもちろん、それに加えて右手と左手の一体感を出すということです。右手と左手の一体感がないと、全体的に支離滅裂な印象になってしまうので気をつけましょう。


⑥ シチリアーナ(作曲者不詳/ピアノ編曲:レスピーギ)


『シチリアーナ』という曲は何とも言えない哀愁漂う名曲です。この曲の原曲は、現在のイタリア南部において古くから伝わる舞曲の一つであると言われておりますが、未だに謎が多く作曲者も正確にはわかっていません。

そんな貴重なイタリアの伝統的な楽曲に注目し、それらをピアノに編曲したのがイタリアの音楽家であるオットリーノ・レスピーギ(1879年~1936年)でした。この曲はレスピーギの『リュートの為の古風な舞曲とアリア』という曲集に収められています。

この曲はピアノももちろんですが、他にもいろいろな楽器で演奏されることも多いです。楽器によって曲の雰囲気もまた変わってきますので、いろいろ聴いてみるのも楽しいと思います。

難易度としては、ツェルニー30番を勉強中の方であればそれほど難しくはないかと思います。この曲は主題がわりとはっきりしていて、変奏曲のような要素もあります。まずは主題となる旋律をしっかりと把握して、そこからどう変化させていきたいのかをよく考えてから練習に臨みましょう。


⑦ 無言歌集より『狩の歌』(メンデルスゾーン)


上記でご紹介した、同じく無言歌集の一曲である『春の歌』に並んで有名なのがこの『狩の歌』です。活発で華やかな曲調と独特なリズムが印象的な名曲で、やはりこの曲もしばしば発表会などで演奏されます。

この曲の独特な旋律は、かつてヨーロッパで狩人たちが狩をする際に連絡手段として使用していた角笛の音色を表していると言われています。

そして題名については、やはり上記の『春の歌』の場合と同様、後になってから別の人が名付けたと言われています。それにしても上記の『春の歌』といい『狩の歌』といい、名付けた人はネーミングセンスが本当に抜群だよなぁ、と私は勝手に感心してしまいます。

難易度としては、ツェルニー30番を勉強中あるいは修了したという方なら充分弾けるほどです。しかしこの曲は、けっこう技巧的な部分もたくさんありますのでそれなりの練習はもちろん必要です。特にこの曲には和音が多く盛り込まれていますので、しっかり一つ一つの音が抜け落ちないように弾く技術が求められます。

尚、この曲についても以前私が執筆させて頂いた他の記事にて、弾き方に焦点を当ててご説明してあります。もしよろしければそちらもご参照くださいね。

【参考記事】
和音を美しく!メンデルスゾーン:無言歌『狩の歌』弾き方のコツと難易度


⑧ ハンガリー舞曲第5番(ブラームス)


ブラームスの『ハンガリー舞曲第5番』、この曲も大変有名です。この曲はピアノだけでなく、管弦楽やヴァイオリン、そしてギターのためにも編曲されています。とにかく多くの人々に愛されている珠玉の作品ですね。

この曲にはハンガリーの伝統が色濃く表現されています。ハンガリーには『チャルダッシュ』と呼ばれる伝統的な国民舞曲があり、それがこの曲の元になっています。

ちなみに上にある動画はピアノ独奏版ですが、この曲は独奏版よりも連弾版のほうがどちらかというと有名かもしれません。連弾版と独奏版の楽譜や音源をそれぞれ見比べたり聴き比べたりして、いろいろな角度で考察できるところもこの曲の面白さだと思います。

この曲の難易度については、だいたいツェルニー30番を修了された方であれば弾けるくらいかと思います。

ただ、この曲は音源をお聴きになればおわかりになると思いますが、特にテンポが速くなったり遅くなったりと、とにかく曲調が目まぐるしく変化します。ですので、いかに流れに乗って表情豊かに生き生きと弾けるかが重要になってきます。ツェルニーだけでなく、ハノンなどの基礎練習も日頃からきっちりやっておくと弾きやすいかと思います。


⑨ 幻想即興曲(ショパン)


ショパンの『幻想即興曲』、こちらも大変人気のある作品ですよね。「この曲が弾けたら格好いいな」と憧れておられる方々も多いかと思います。そして題名は知らなくても、曲は何となく聴いたことがあるという方もおられるのではないでしょうか。

そんな『幻想即興曲』ですが、実はショパン先生はこの曲を世の中に出してほしくなかったそうなのです。

当時、ショパン先生はフォンタナという友人に「自分がいなくなったらこの楽譜は燃やして処分してほしい」というような内容の遺言を伝えたのだそうです。びっくりですよね。それぐらいショパン先生はこの曲が気に入らなかったみたいです。良い曲だと私は思うのですが……。

しかしフォンタナはその遺言に背いて、ショパン先生亡き後にこの曲を出版してしまいました。『幻想即興曲』という題名は、出版の際フォンタナがつけたものであると言われています。

フォンタナのおかげで今こうしてこの曲に触れることができるのは、とてもありがたいことですが、ショパン先生のお気持ちを考えると、ちょっと複雑なところもありますよね。

さて、気になる難易度については単刀直入に申しますと、まず決して簡単に弾ける曲ではないことは確かです。ツェルニーの教則本だけを基準に考えると、だいたい30番を修了し40番を勉強している方ならば、頑張って練習すれば弾けるかと思います。

この曲は、慣れないうちは両手で合わせるのがとても大変な曲です。譜面をご覧になればおわかりになると思います。まずはとにかく、両手に慣れることがこの曲の第一関門であると私は思います。マスターまでの道のりはとても長く感じるかもしれませんが、コツコツと諦めずに練習を重ねましょう。


⑩ ラ・カンパネラ(リスト)


リストの『ラ・カンパネラ』をマスターしてお披露目できたら、おそらくかなり注目されるのではないかと思います。中には「クラシック自体はよくわからないけれど、この曲のすごさはわかる!」というように感心する人もいるほどです。とにかくこの曲の影響力というのはものすごいと私は思っています。

※この曲の正式な題名は『パガニーニによる大練習曲第3番嬰ト短調』です。

ここで言う『ラ・カンパネラ』というのは、パガニーニが作曲した『ヴァイオリン協奏曲第2番』の中の第3楽章である、ロンド『ラ・カンパネラ』をピアノ用にリストが編曲した作品のことを指します。『ラ・カンパネラ』を扱ったリストの作品は、この曲を含めて実は全部で4曲存在します。その中で最も有名なのがこの曲なのです。

また『ラ・カンパネラ』とはイタリア語で『鐘』を意味していて、題名の通り曲の冒頭から鐘の音を思わせるような旋律が流れていきます。

この曲の難易度はかなり高いです。楽譜を見るとおわかりになると思いますが、この曲は音があちこちに跳躍するという高度な特徴が見受けられます。ですので、とにかく地道な練習と根気が必要になってきます。

特にピアノの中級者になりたてという方の場合、練習すれば弾けるようにはなりますが、そうかと言っていきなりこの曲に挑戦すると、場合によってはつまずいてしまうこともあるかもしれません。ですので、例えばショパンのエチュード集など、難易度がわりと近い曲をいくつかマスターしてから挑戦することをおすすめします。

全体的なまとめ


ここまで耳に残るピアノの名曲を10曲、難易度順にご紹介してまいりましたが、いかがでしたか?

耳に残る名曲というのは、もちろんその作品にある元々の旋律や構成などが印象的であるのは言うまでもありません。そして、その印象をさらに深いものにするためにはやはり弾く側の個性が重要です。個性の違いこそが表現する上での醍醐味なのだと思います。

世の中には上記で挙げた曲の他にも、素敵な曲はまだまだたくさんあります。
ぜひお気に入りの一曲を見つけてくださいね。

by ピアノ弾きのもぐら