軽快なリズムに乗ってスイング、思わず体も動いちゃうアップテンポな曲調や、しっとりバラードで、物思いにふけたくなるような雰囲気のあるスローテンポ等、ジャズの演奏雰囲気は様々です。

ここでは、ジャズピアノ演奏での左手の役割について、様々なシチュエーションに応じた弾き方についてご紹介させていただきたいと思います。

■ 目次

一般的なバンドの構成について

本題に入る前に、ジャズでも、ポップスでもロックでも、基本的なバンドの構成は概ね同じです。

テレビ等でもよく見るバンドの構成。主旋律担当(ヴォーカルやサックス等)、和音担当(ギター・鍵盤楽器・弦楽器等)、低音担当(ベース)、リズム担当(ドラム・パーカッション等)が主な構成です。

上記の基本的な構成を踏まえると、ジャズピアニストが置かれた状況によって、ピアノがどの役割を担当するのか、の理解に役立つと思います。

ピアノ一人の場合

バンド演奏が始まる前、お客さんがぼちぼち入り始めたころ、バンドリーダーから、おいそこのピアノ君、バンド演奏が始まるまで適当にピアノを弾いていてくれ、と言われる。

おっ…ひ、一人でですか?弾くのを間違えたら、お客さんに気づかれちゃうじゃないっすか~、とか思いながら、スタンダード本をペラペラめくりながら、よし、この曲なら弾けそう、と演奏開始。

っと、前置きの妄想が広がりすぎましたが、ピアノ一人で演奏する場合の左手は、先述の、主旋律、和音、低音、リズムのすべてを網羅する必要があります。というか、ピアノは、それが可能であるので、楽器の王様、なんて呼ばれているのかもしれませんね。

一人で何役もこなすためには、左手さんと右手さんの共同作業が必要になります。この場合、左手は、低音と和音、リズムを担当します。

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アルバムタイトル「ALONE」(ビルエバンス)


ビルエバンスの繊細なフレーズや雰囲気が素敵なアルバムです。

一人で演奏する場合、左手は低い音(低音担当)をしつつ、和音も同時に弾きます。右手でも和音は弾くので、和音のすべてを網羅する必要はありませんが、低音を弾きつつ、和音の一角を左手で担い、ムードを出していくといった感じです。

また、アップテンポの場合、左手で、ジャズベースでよく聞かれる、ウォーキングベースを再現する場合もあります。四分音符でブンブンと弾く雰囲気を左手で再現すれば、本番前のひと時のBGM代わりのジャズピアノソロで、お客さんが大盛り上がりするかもしれません。←多分、後からバンドリーダーに、盛り上げすぎだ、と注意を受けるかもしれませんので、そこは自己責任で…

本番前やラウンジでのBGM代わりのピアノ演奏から、思いっきりピアノだけを聞かせる本番でのピアノ独奏まで、一人でピアノを弾きこなすのは、緊張もしますが、自身の思うように弾いて良いですし、私を見てくれている!という喜びにもつながりますね。

バンド演奏の場合

ピアノ以外に、ベースや、ギター、ドラム、ソロ楽器(ヴォーカルやサックス等)が居る場合、ピアノは一人の時よりもやや控えめに、左手さんもその役割が大きく変わります。

まず、低音はベースが担当するので、ルートの根音(例えば、ドミソの和音の時の、ド、の音)を弾く必要がなくなります。というか、低音を弾いちゃうと、ベース担当の方と音域が重なってしまって、全体的なハーモニーが崩れてしまいます。

続いて、和音については、ギター担当の方との目配せで決めることになります。ギターがジャカジャカ和音を弾いているときは、ピアノはやや控えめ程度に和音を弾く程度で大丈夫。ギターの方があまり弾かない方であれば、ピアノが主になって和音を弾く必要があります。

この時の左手の役割は、和音の一部を担うことが多いです。例えば、C(ドミソ)というコードがあったときに、ジャズっぽいコードに変換して、ドミソシ~の和音で弾く場合、左手はミ・シ、右手はド・ソ、の音を担当する、といった感じ。(ん~文章で表現がわかりにくいと思いますが…)とにかく、和音を担当するとともに、その和音を弾くタイミングにより、リズムの一翼も担います。

また、主旋律担当が居ない場合は、最初と最後のテーマを弾く、といった主役の役割もこなす必要があります。これは、ピアノジャズトリオ(ピアノ・ベース・ドラムで構成されるジャズの音楽スタイル)の場合などです。

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アルバム「ザ・スタンダード」(ピアノ、トミーフラナガントリオ)
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ソニーミュージックエンタテインメント


スタンダード曲満載のアルバムは聞いていて心地よすぎます。

ベースがソロをしている時

こちらは番外編。ベースまでソロが回ってきて、低音でなまめかしいソロを弾いているときのピアノの役割は、ひ、か、な、い。←お、も、て、な、し、のマネ…

小さな音でうっすら弾いても大丈夫ですが、私はほとんど弾かないことが多いです。だって、ベースの方って、いつも伴奏を支えてくれていて、ずーっと弾いているのに、スポットライトが当たるのはほんの少し。そんな縁の下の力持ちの方の演奏は、じっくり聞きたいので。


以上、私なりのジャズピアノの左手の役割についてご紹介させていただきました。一人で演奏するときは、自分のやりたいように、バンド仲間と一緒に演奏するときは、全体的な調和を考えながら演奏を心掛けたいですね。



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