音楽療法を実践する時に、まずはじめに行う事の一つが、その季節や対象者に応じたプログラムを組むことです。

私はいつも、その日にセッションに参加してくれるであろうメンバーのことを思い浮かべながら、プログラムを考えています。

私がある年の6月に行った、音楽療法のプログラムの実例をご紹介したいと思います。

セッションの概要と導入の曲

当時は高齢者のデイサービスに勤務していました。そこではレクリエーションの時間を使って、音楽療法を行っていました。

クライエントは、60歳代から90歳代の高齢者が25名程、1時間弱のセッションです。比較的、活発な方が多く、セッションが盛り上がる事の多いグループです。

まずは、導入部分で歌唱活動を行いました。

私はほとんどの場合、導入の部分で季節の歌を使います。

それはやはり、歌によって季節を感じていただきたいのと、ほとんどのクライエントが、もともと歌えるか、聞いたら思い出せる曲が多いからです。

そのセッションでは「かたつむり」と「雨降りお月さん」を歌唱しました。

「かたつむり」では何回か歌唱した後、歌詞を隠して、正確に歌えるかというクイズもしましたが、クライエントたちは、楽しんで歌ってくださいました。

歌詞を考えながら歌っていただくと、脳トレになり、これから音楽療法に参加するという事を意識していただく、いいきっかけになります。

体操を取り入れた曲

次に用意したのは、体操を取り入れた曲です。「かえるのうた」を選びました。

これは、当時、私が勤務していたデイサービスで、毎日体操に使われていた曲です。

このように、クライエントがいつも聞いている曲を使い、いつも行なっている体操をする事で、クライエントはすぐに体を動かすことができますし、音楽療法の世界に入って来やすくもなります。

「かえるのうた」は輪唱に挑戦できる曲でもあります。
かえるの歌に挑戦されている高齢者の動画がありますので参考にしてみてください。



歌唱のための曲


この時、歌唱のために使用したのは「私の青空」「憧れのハワイ航路」「真っ赤な太陽」です。

「私の青空」については、ほとんどの方が歌える曲ではなく、場の空気が盛り下がってしまいました。

音楽療法のセッションでは、このようなことが起こります。年代的に知っているであろう曲でも、多くの方が知らないと歌が聞こえてきませんし、知っていても難しすぎて歌えないという歌もあります。

少し難しい曲に挑戦することは、脳の活性化に繋がるのですが、難しすぎると、セッションへの参加意欲が失われてしまう恐れがあります。

そういった場合、セラピストは切り替えが肝心です。無理に難しい曲に挑戦するのではなく、次の曲に移ったほうがいいかもしれません。セッションの時間が短くなってしまう懸念がある場合は、他の曲を繰り返して歌ったり、リクエストの曲をとりいれたりするといいですよ。
「憧れのハワイ航路」と「真っ赤な太陽」の歌唱は、クライエントが楽しめる内容でした。

「憧れのハワイ航路」については、若いころ旅行に行った際の話や、行けるとしたらどこに旅行に行きたいかなど、旅行にまつわる話に花を咲かせたりするといいですね。

「真っ赤な太陽」は、難しいと感じるクライエントもいた様子でしたが、しっかりと歌っていただいている方もいました。そんな方につられて、一部だけ歌っていただいている方、歌に耳を傾けていただいている方と様々でした。

高齢者の音楽療法では、歌唱する事の効果は、心肺機能の向上、血流の増加につながるとされています。

また、誰かが歌唱している昔の曲を聴く行為についても、若いころを思い出し、脳を活性化してくれるものとされています。

高齢者になじみのある曲をいくつか自分のレパートリーとして演奏できるようにしておくといいかもしれません。

楽器を使用した曲


次に「きよしのズンドコ節」で楽器演奏を行いました。
使用楽器は、タンバリン、手作りマラカス、すず、鳴子です。

それぞれ、クライエントに楽器を選んでもらいながら配りました。

楽器を配る際、中には麻痺などの障害のある方もみえますので、そういった場合は演奏しやすそうなものを促すこともあります。

「きよしのズンドコ節」は数年前に流行した曲ということもあり、懐かしがってくれる方から、忘れてしまったという方まで様々でしたが、曲がはじまると、リズムをとっていただける方ばかりでした。

使用楽器は、施設に人数分ある場合と、そうではない場合があります。

ない場合は、順番に使えるように何回か曲を演奏したり、曲の途中でお隣の方に渡すというプログラムを加えたり、セラピストが持っている楽器を順番に叩いていただいたりする工夫が必要です。

可能であれば、音楽療法が行われる日よりも前のレクリエーションの時間に、手作り楽器を作っていただき、それを使用するというのもいいですね。

クールダウンの曲

私は、セッションの終わりのクールダウンの曲を、毎回同じ曲にするようにしています。この曲が流れればセッションが終わるのだということを、より認識していただくためです。

同じ理由で、導入の曲も、毎回同じにしてもいいかもしれません。

クールダウンの曲は「ふるさと」です。
これもほとんどの方が歌詞を見ずに歌うことができるので、クールダウンには適しています。

これが、あまり知らない歌であると、歌えなかったというマイナスの印象で終わってしまいかねません。

また、あまりテンポの速い曲も避けたいものです。高揚した気持ちのまま終了してしまうと、特に認知症の高齢者は自宅に帰ってからも、その気持ちを持ち続け、思わぬ行動に出てしまうこともあるからです。

まとめ

1.導入としての季節の曲として「かたつむり」「雨降りお月さん」
2.体操をとりいれた曲として「かえるの歌」
3.歌唱のための曲として「私の青空」「憧れのハワイ航路」「真っ赤な太陽」
4.楽器を使用した曲として「きよしのズンドコ節」
5.クールダウンの曲として「ふるさと」

以上が、私が6月に高齢者向けに行った、音楽療法プログラムの実例です。

プログラムを考えることは、悩むことも多く、難しいものです。時には実践してみて失敗だったと思える曲を選んでしまうこともあります。

それでも、セッションの全体が実りあるものになれば、クライエントの笑顔を見ることができます。感謝の言葉もいただけることもありますよ。