ショパンの『子犬のワルツ(小犬のワルツ)』、超有名な曲ですよね。曲調も軽快で可愛らしい雰囲気でテンションも上がります。そんな憧れの曲だけどいざ弾くとなると意外に難しい。そんなお悩みを抱えておられる方は必見です!

それではショパンの『子犬のワルツ』の弾き方、私の経験を交えながらこっそり楽しく教えちゃいます!


こんにちは!
まず軽く自己紹介ですが、ピアノ弾きのもぐらと申します。たくさんの方々がピアノを好きになってもらえるようにと願って、畑の地中で穴掘りをするかたわら、ピアノの弾き方をわかりやすく教えている、そんな音楽好きなもぐらです。

■ 目次

想像よりも難易度は高くない!


では本題に入りますね。まず子犬のワルツの一般的な難易度は中級程度、具体的にはツェルニー30番練習曲の後半あたりからツェルニー40番練習曲の前半くらいが弾ける方であれば充分マスターできる曲です。

今回の記事では主に、ある程度ピアノや楽譜の知識を持ったピアノ中級者の方々の目線においてお話していきますね。

繰り返しの多い構成!

では、おおまかな全体的な曲の構成をご説明します。構成と言うと難しそうに聞こえるかもしれませんが、『子犬のワルツ』は意外とシンプルです。なぜなら最初の数ページをクリアすればあとはだいたいその繰り返しだからです。

まず、こちらの動画を聴いてみてくださいね。
こちらの動画では、セクションごとのリピート=繰り返しは省略されてます。


こちらの記事では一曲をわかりやすくセクションごとに細切れにしてご説明していきます。

一見すると大変そうでも、細切れのセクションごとに練習すれば案外難しいことなんてありません。一つ一つ、クリアしていきましょう!

尚、カッコ内にある時間は上記の動画に沿ったものです。動画で曲の構成をよく理解しておくと練習しやすいです。

セクションA:(最初~0:17)
セクションB:(0:18~0:30)
セクションC:(0:31~1:00)
セクションA′:(1:01~1:20)
セクションB′:(1:21~終わり)

それでは、各セクションを順番にご説明していきますね。

もぐら式!弾き方のコツ

☆セクションAの弾き方 ~大変なのは最初だけ~

こちらはセクションAの冒頭です。

ショパン「ワルツ第6番『子犬のワルツ』変ニ長調Op.64-1」冒頭部分のピアノ楽譜
冒頭は右手のみですが、軽快な響きが求められるので、音の粒を揃える(一つ一つの音量を均等にする)ための練習が必要です。
※「Molto Vivace.」は「とても速く」、「leggiero」は「軽く・軽快に」という意味です。

私はこの曲を最初に練習しようとした際「なんだ、ここって右手だけでいいじゃん、練習いらないや!」などとナメまくっておりました。
しかし、曲の冒頭というのは実はけっこう大事で、まさにここが演奏者の技術に対する第一印象なのです。
第一印象を向上させるために、たとえ右手だけであっても気を抜かず、ゆっくりと音を均等に鳴らせるように練習しましょうね!


そして冒頭からいよいよ最初の旋律に入りますが、セクションAはここからほぼ同じようなフレーズが二度出てきます。1フレーズ8小節分あります。つまり、これをもう一度繰り返すというわけなので、最初の8小節さえクリアすればセクションAはほぼ弾けるということです。


基本的に最初のうちは右手と左手を片手ずつ交互に、ゆっくりと練習していきましょう。これはピアノの練習全般に言えることです。

セクションAの弾き方のコツは、曲全体にも同じことが言えますが左手の音がうるさくならないようにすることです。
右手がなるべく際立つように左手の音量を加減できればOKです。

そして、当たり前なことのようにも思えますが、休符の部分はしっかりと音を止め、静寂をつくりましょう。
このような軽快な曲は休符の指示を守らないと、たとえどんなにテンポを速めて弾けても全体的にだらだらとした響きになってしまいます。
逆に、たとえテンポがゆっくりでも休符の指示をしっかり守って弾けばちゃんと軽快な響きになります。そのあたりを意識しながら弾いてみましょう。


ペダルにもポイントがあります。
ペダルを踏むと音が伸びるので、あたかも「あれ? 自分何だか上手くない? 上手いよね!」と上手になったような錯覚を覚えませんか? 私だけでしょうかね。ついついそう思ってしまうもぐらなのですが……。
しかし、ペダルを必要以上に踏みすぎると軽やかさがなくなって重苦しい雰囲気になってしまいます。これでは子犬も元気がなくなってしまいますので、気をつけましょう。


そして右手も当然軽やかさが求められ、冒頭と同じく音の粒が揃うとより綺麗に響きます。片手練習の段階で音の粒を均等に揃えて弾けるようになるまで頑張れば、あとは驚くほどトントン拍子に弾けちゃいます。

☆セクションBの弾き方 ~曲の雰囲気も大切に~

次にセクションBです。ちょっと不安な雰囲気が漂っているようにも感じられます。(0:18~)

譜面の最初の部分はやや控えめに、私はこの場面は、何かを少し心配するように小さめな音で弾いて雰囲気を出すように心がけてます。でも後半にはその心配が晴れたようにまた軽快な雰囲気に戻ります。右手はセクションAと同様に音の粒が揃うまで粘り強く練習しましょうね。

ショパン「ワルツ第6番『子犬のワルツ』変ニ長調Op.64-1」セクションBのピアノ楽譜
ここの右手は「ファ」の音から鍵盤を低い音に向かって下がり、セクションBを締めくくりますが、ここでは指の運びに気をつけましょう。(0:27~)

私はここがけっこう苦手で、音の粒が揃わずついつい惰性でダダーッと崩れるように弾いてしまうことが多いのですが、そういうときというのは大抵無理な速度で弾いていることが多いので、メトロノームを使ってテンポをしっかりキープしながら無理のない速度で練習するのがコツです。けっして焦らないように!

☆セクションCの弾き方 ~あともうちょっと~

さて、セクションCはセクションABとは打って変わってロマンティックで落ち着いた雰囲気な曲調ですね。まるで子犬が遊びつかれてお昼寝しているかのように感じられます。え? 違う? まあイメージの部分は皆様のそれぞれ自由で豊かな想像力にお任せします。(0:31~)


セクションCも同じようなフレーズが二度出てきます。基本的にフレーズの繰り返しですが、繰り返しのつなぎ目の部分がそれぞれちょっとずつ変化するので、譜面全体を見て音をしっかり確認しましょう。

ショパン「ワルツ第6番『子犬のワルツ』変ニ長調Op.64-1」装飾音のピアノ楽譜
そして、譜面にあるような装飾音は、極力小さくさりげなく鳴らすように心がけると、主となるフレーズが際立って美しい響きになります。装飾音を弾く指には力を入れないようにするのがコツです。(0:46~)

そしてセクションCの最後のほうは「ちょっとやりすぎじゃない?」と思うくらいもったいぶってリタルタンド(意味:だんだん遅く)しましょう。ここでもったいぶることで、次のセクションが一層際立って聞こえます。

☆セクションA’とセクションB’の弾き方 ~ほぼ繰り返し~

セクションA’(1:01~)とセクションB’(1:21~)は、最初のセクションAセクションBの繰り返しだと思ってくれて大丈夫です。音や弾き方はほぼ同じなので、もうほぼマスターしたようなものです。

ですが、ここでもいくつかポイントがあります。

ショパン「ワルツ第6番『子犬のワルツ』変ニ長調Op.64-1」長めのトリルのピアノ楽譜
譜面の通り、長めのトリルが出てきます。
「うわぁ……トリルかよ~、何だか難しそう」
そう思われた方々、私も実はトリルって苦手なのです。というのも、なかなか均等に音の粒が揃えられない。するとある一つの音だけが目立ってしまい、響きも綺麗に聞こえないのです。

でもトリルには何拍にいくつ音を入れろだなんていう厳密な決まりはありません。つまり自由に弾いて大丈夫なのです。たとえ音の数が少なかったとしても、それが正解だとか不正解だとか、そんな基準も無いのです。

私の場合は音を素早くたくさん鳴らすのはあえて最終目標にして、とにかくゆっくりなテンポで音の大きさを均等にして、一つ一つの音の粒を揃えることを優先に練習してました。
後は慣れてくれば自然と速く弾けるようになります。

トリルを綺麗に響かせるコツは、手首や腕や肩の力を抜き、そしてその抜いた力を指の先だけに集中させるようなイメージで、ゆっくりなテンポから練習することです。
力が抜けるのに慣れてきたら、だんだんとテンポを速めてみてください。無駄な力をかけないで弾いているので、手も腕も痛くならないし何より響きも綺麗になったことがおわかりになるはずです。

ショパン「ワルツ第6番『子犬のワルツ』変ニ長調Op.64-1」最後の部分のピアノ楽譜
そして最後の部分ですが、パッと見た感じだと何だかすごく難しそうに見えますね。たくさんの細かい音符が苦手という方もいらっしゃるのではないでしょうか?(1:44~)

でも何のことはないです。落ち着いて譜面を見ると、ここはただセクションBの最後のフレーズが1オクターブ多く、つまり音が高くなっただけ。セクションBの最後のフレーズと同じように、メトロノームを使ってゆっくり丁寧に練習していけば難なく弾けるようになります。

確認しよう!弾き方のコツのまとめ


では最後に、ショパンの『子犬のワルツ(小犬のワルツ)』の全体的な弾き方のポイントを以下にまとめました。
  1. 軽やかに重くならないように弾く(特にセクションAセクションBセクションA’セクションB’
  2. 片手練習は右手、左手共にゆっくりと丁寧に根気よくやる(全体的に)
  3. 右手は常に音の粒を揃える(特にセクションAセクションBセクションA’セクションB’
  4. 左手は音がうるさくならないように心がける(全体的に)
  5. メトロノームを活用してテンポをしっかりキープしながら少しずつ速める(特にセクションBセクションCセクションB’
  6. トリルは手首、腕、肩の力を抜き、その力を指の先に集中させるイメージで弾く(特にセクションAセクションA’
  7. ペダルは必要以上に踏みすぎない(特にセクションAセクションA’
  8. いきなり全部ではなく、セクションごとに区切って細切れに少しずつ練習する(全体的に)
この8つのポイントを念頭に練習すると、短期間で効率的に弾けるようになります。
そして、こちらを参考にたくさん弾いていくと、だんだんと自分なりの表現もできるようになります。

それでは練習、頑張ってくださいね。畑の地中から応援してます!

by ピアノ弾きのもぐら



「子犬のワルツ(小犬のワルツ)」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1915年にシャーマー社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。
  • Mutopia Project(楽譜リンク
    最近整形されたきれいなパブリックドメインの楽譜です。

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