この曲はメンデルスゾーンの48曲からなる無言歌集の中の一曲です。
他には「春の歌」など有名な曲も含まれていますね。

この「プレストアジタート」は速度の指示がそのまま曲のタイトルになっている曲です。
プレストとは極めて速く。アジタートは興奮気味で。という意味です。

この曲は「胸騒ぎ」という言い方もありますが、実際のところ「プレストアジタート」も「胸騒ぎ」も、メンデルスゾーン本人が付けた名前ではないそうですね。

だからこそ、この曲を聴いてどう感じたかで、自分の中でタイトルを作り変えてみても良いと思います。

私の場合は、胸がドキドキするような胸騒ぎというよりかは、心臓がバクバクする胸のざわつきという表現の方が合っていると思い、怒りに任せて感情が爆発しているイメージや、何かに急かされているような焦燥感を持って弾いていました。

もちろん実際に先走り、焦って弾いてしまってはいけませんが、正常な判断を失ってしまうくらい頭に血が上っている状態。を想像してみて弾いてみてはいかがでしょうか。



難易度は?

難易度は全音ピアノピースの難易度に私の感覚で当てはめると、C(中級)といったところでしょうか。
譜面を読むこと自体は難しくないと思うのですが、プレストアジタートという曲名だけに、速く弾かないことには曲の趣旨に沿っているとは言えません。とにかくスピードが命です。

速く弾かなければならないということに関しては少し難易度が上がってしまうのかな?とも思うのですが、それに関しては少しずつ速く弾く練習をしていけば案外問題ないかと思います。

この曲は左手の伴奏がほとんど16分音符で続いて、難しそうに見えますよね。
しかし、不規則に音が並んでいるわけではないので、そこまで苦戦しないと思います。
最初は左手だけ練習して、慣れたら右手を加えるようにするとよいでしょう。

また、この16分音符の伴奏にばかり気を取られてしまうと、右手のメロディを引き立たせるはずが、伴奏の方が目立ってしまうということになりかねません。

あくまで伴奏は伴奏。16分音符をしっかり弾かなきゃ!と思って力が入る気持ちもわかりますが、メロディの邪魔をしないように弾きましょう。

怒りと焦燥感をイメージ


1小節目から怒涛の16分音符が始まりますね(笑)
この曲はとにかくスピードが命な曲ですので、1小節目を弾いても2小節目、2小節目を弾いても3小節目・・・と、先のことをどんどん意識して弾いていかないと心の準備が間に合いません。

また、小節最後の8分音符はスタッカートがついています。
小さな糸がプチッと切れるようなイメージで弾いてみましょう。

この8分音符を弾いているときには次の小節の16分音符を弾く手の形を準備しておきましょう。
手の形をあらかじめ準備しておくことで、あとは指を動かすだけで素早いパッセージを素早く美しく弾くことができます。


さて、9小節目からはようやく右手のメロディも加わり、この曲のメインパートともいえる場面に入りますね。
先にも伝えた通り、左手の16分音符はあくまで伴奏ですので、右手のメロディを邪魔してはいけません。

右手メロディにはスタッカートが多いですね。
レガートがついている部分にもスタッカートがついているので、滑らかに短くというのは 少々頭を悩ますところです。
私は指先を鋭く固めてピリッとスタッカートをし、それでも音はできるだけ繋がるように意識して弾いていました。

和音はそれぞれの音がきっちり同時に打鍵されていないと、音がボソボソして聞こえてしまいます。
特にこの曲の前半部分のメロディはほとんどが和音になっておりますので、鋭い打鍵がとても重要です。


24小節目からは左手伴奏の形が少々変化しますね。
1拍目8分音符を小指で、16分音符の始まりは親指で弾く方法がスマートですし、実際そう弾く方が多いと思います。

この弾き方で気を付けていただきたいのが、レガートをしっかり守るということ。

ここでは3つの16分音符で一区切りになるはずなのに、16分音符の最初を親指で弾くことによって8分音符と16分音符の1つ目で一区切り。2つ目の16分音符と3つ目の16分音符で一区切り。と、2音ずつで区切ってしまいやすくなるのです。

8分音符はベース音としてしっかりと鳴らし、16分音符とは別物ととらえることで、そういった弾き方を防ぐことができると思います。


60小節目はいつもの16分音符。そして61小節目には8分音符と、このパターンを交互に繰り返していきます。
ここは16分音符の部分はのびやかに、8分音符の部分は緊張感をもって、気持ちを切り替えて弾きましょう。
また、8分音符は腹筋に力を入れて、指先に集中し鋭く弾くとよいと思います。


69小節目からは新しいメロディですね。
右手がメロディ部分と伴奏部分を一緒に演奏する形になります。
ここで陥りやすいのが、右手の伴奏部分の主張が激しい、もしくはメロディパートが聞こえないせいで、どこがメロディパートなのかわからなくなるということ。

16分音符は触れる程度で、メロディ部分は指をよく立てて主張するように弾きましょう。そしてメロディを自分の頭の中でよく鳴らし、どのように歌いたいかをイメージします。

どの曲にも言えることではありますが、なんとなく弾いてもそれはなんとなくにしか聞こえません。
自分の中でこう弾きたい!というイメージが強ければ強いほどそれは演奏に反映してくると思います。
ここの部分も、メロディはこうやって歌いたいんだ!というイメージがあるとないとでは、表現に大きな差が出てくると思います。


85小節目左手の和音にこれでもか!というほどフォルツァンドがついていますね(笑)
フォルツァンドはその音を特に強く弾く!という意味です。
なので、左手の伴奏は指先を固めて、また、お腹から力を入れて弾くように、1音1音腹筋を使って弾くとよいと思います。

右手はてっぺんから降りてくる毎にだんだん最初の負の感情を取り戻していき、最初のメロディに戻ってくるイメージです。


88小節目は強弱の指定がピアノになっていますので、最初のような激しさはありませんが、心の中では負の感情をくすぶらせているイメージです。

90小節目にはエスプレッシオーネがついています。この記号は表現豊かに弾くという意味があります。
最初の怒涛のような雰囲気から一変して、ここは歌うように美しく弾きましょう。


96小節目からは長いクレッシェンドがついていますが、盛り上がったと思えばディミヌエンドをしています。
ここも怒りをぶつけるというよりは、美しく歌うようなイメージですね。


しかし、最後の最後まで負の感情は強く持ち続けたまま、119小節目の16分音符を奏でます。
怒りが収まったのではなく、一時的に気持ちを抑え込むことにしたように弾いてみてはいかがでしょうか

まとめ

1、絶え間なく胸のざわつき・怒涛のような感情をイメージして弾き続ける!
2、16分音符ばかりに気を取られてメロディラインを消さないように注意!
3、スピードが命!少しずつ、弾けるスピードから練習しましょう♪


いかがでしたでしょうか?最初にも伝えた通り、「怒りや焦燥感をもって」というのは、あくまで私個人のイメージです!みなさんがこの曲にどんなイメージを持ったかで、曲のイメージは大きく変わってくると思います。

この曲に限らずとも、演奏するときは自分の中で完成形を組み立ててから、それにいかに近づけて弾くことができるかが、カギになっていると思います。
ぜひ、みなさんもそれぞれの考える、自分だけのプレストアジタートを演奏してみてくださいね!


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