ホルン吹きの皆さんが絶対にぶち当たる悩み、それも本番中の見せ場でよく起こる悩みが「バテる」です。曲の後半のクライマックスの直前でバテてしまい、悔しい思いをしたという方は多いのではないでしょうか。

私自身もホルンを吹いていますが「バテ」とはかなり長い年月格闘してきました。ただ、ここ数年で「バテ」の質が変わってきたように思いますし、「バテ」とうまく付き合っていくことができつつあります。

皆さんが悩むであろう「バテ」は確かに厄介な問題ですが、自分の問題点を浮き彫りにしてくれる良い材料です。奏者としてのバロメーターを示してくれますし、唇を壊さない為にも、いかに「バテないか」ではなく「バテ」とどう付き合うかを考えていきましょう。

■ 目次

そもそも「バテる」って?

みなさん「バテる」というと、どういう状態を想像しますか?
私は楽器を吹き続けることによって、だんだんとパフォーマンスが落ちてきてミスや音外しが増えたり、最終的にはまったく音が出なくなったりといった状態の時に「バテたな」と感じます。

私自身も、昔は、唇がバテるのに悩まされていましたが、ここ二年か三年はお腹や呼吸、そして背中や腰の痛みに悩まされることのほうが多くなりました。
しかし今では、唇がバテてしまった時の対処法を見つけ、身体の使い方も工夫するようにしており、しっかりと吹ける時間が格段に伸びました。

一言で「バテる」といっても様々なタイプがあります。大きく分けると「唇がバテるタイプ」と「身体がバテるタイプ」があります。この二つのタイプは原因や対策、そして奏者の傾向も違うので分けて説明していきたいと思います。

「唇のバテ」への対処法

初心者の方や楽器を始めて日が浅い人によく起きるのが「唇のバテ」です。
これは誰もが経験するバテの代表的なものです。単純に口にマウスピースを押し付ける時間が長い、力が強いという原因で起こります。

唇にマウスピースを押し付けることを「プレス」と言いますが、これが唇がバテる原因の代表です。このバテの対処法はその人によって違います。

初心者の場合

プレスによって唇が痛くなることもあるので絶対に無理をしないのが大切です。また、プレスに頼らずにしっかりと息を使って楽器を吹くというのが上達の近道なので、プレスが弱くても良い音で吹けるように練習するのが一番の対処法です。

プレスは悪いことではありませんし、むしろ演奏に必要なものですが、バテている状態で無理に吹き続けるのは悪い癖を生み出しかねないので要注意です。

ある程度経験者の場合

ある程度ホルンを吹いてきている人であれば、バテたので吹けませんと言うこともできませんし、その辺は自分でコントロールできていることでしょう。しかし、それでも唇が言うことを聞かないということは多々起こります。

まず、経験者の場合は唇周辺の緊張を緩和するというのが唇のバテを解消する最も代表的な対処法です。
一番簡単なのがマウスピースを口から離した状態で唇を震わせるというものです。プロの方も曲の間に行っている最も有名なバテ解消法です。

また、上級者や上吹きの人で唇を震わすだけでは唇が持たないという人へのおすすめの方法があります。

それは、口を指で横に引っ張るというものです。人差し指などを口の両端に引っ掛けて「ぐいっ」と伸ばすと驚くほど復活します。バテると吹いているうちに唇が中心に寄ってきてしまうそうで、それによってコントロールが難しくなるのをリセットしてくれる対処法です。

演奏中にやるのは見た目的に少々リスクが大きいですが、唇を震わせる方法よりも即効性と確実性で優れていますので、上級者やオケの上吹きの方は活用してみてください。

「身体のバテ」への対処法


ある程度、演奏年数を重ねると現れるようになるケースが多いのが「身体のバテ」です。具体的には、息を吸ったり吐いたりするときに使う呼吸器やお腹のバテと、吹く姿勢の維持などに起因する関節や筋肉のバテとも言うことができます。

このタイプのバテは正直、奏者によって対処法は様々だとも言えますが、汎用性の高い対処法やアドバイスを紹介していきます。

息(ブレス)に関連するバテ

これは、アンブシュアやマウスピースを見直すというのが一つの対処法です。効率の良い音の出し方、響かせ方を研究すると改善することが多いです。

息に関してバテる方に多いのが、とにかく大きい音で一生懸命吹こうとするタイプです。確かに大きい音が必要な局面はありますが、パートには他の人もいて分業することも可能ですし、何よりもパートやセクションで和音を合わせることによって「きれいに大きく」聞かせることもできますので、一度意識を見直してみるのも良いかもしれません。

また、呼吸がいわゆる胸式の呼吸になっていると疲れてしまいます。そして、吹くことよりも吸うことに意識を向けると疲れにくくなります。しっかりと吸うことで、吹くときは自然に息を吐く感じで吹けるようになり疲労が激減します。

関節や筋肉に関するバテ

これは、本当に様々なタイプがあります。楽器を支える腕、背中のバテや腰痛などが挙げられます。

対処法の一つとして提案するのは、「吹く姿勢を積極的に変化させる」というものです。疲れたら背もたれによりかかる、肘を乗っける、ベルを膝の上に置いてしまう、など色々と考えられます。要するに一つの部位に負担をかけ続けさせないというのがポイントです。

私の個人的なおすすめは、自分が一番吹きやすい「勝負姿勢」を決めておき、ソロや重要なメロディー、音量が必要な時や大事な音を吹くときにその姿勢で吹き、その他の時は少しリラックスした姿勢をとるというものです。

レッスンの先生から教わったものですが、この方法は本当にお勧めで、長丁場なオケ曲を吹くときなんかに大変便利です。勝負姿勢を決めて、同じ姿勢で吹き続けるということを制限すると本当にバテなくなりますのでお試しください。

そのバテ、もしかしたら楽器の問題かも?


最後に、バテと楽器の関係について解説します。
実は、皆さんのバテの原因が楽器やマウスピースにあることも考えられるからです。

楽器に関しては重い楽器、左手が持ちにくい楽器はやはり無駄な労力がかかるのでバテる原因になります。重い楽器は良い音がすることが多いので一長一短です。左手に関しては小指の指かけを調節したり、サポーターなどで対処したりすると良いでしょう。

また、海外のメーカーの楽器だと良い音はするのですが、重かったり、独特の息が持っていかれる感覚があったり、ピッチを良くするのに苦労したりといったことも多いので、バテやすくなる傾向があります。


マウスピースも重要です。大きすぎるマウスピースでは息が続かず疲れてしまいますし、効率よく吹くことができなくなります。

マウスピースの唇と接触する「ふち」の部分が細すぎると結果として唇にかかる圧力が大きくなるので唇がバテる大きな原因の一つとなることは覚えておくと便利でしょう。唇への圧力はバテに直結するので是非マウスピースも見直してみてください。

まとめ

ここまでについてまとめてみましょう。

・「バテ」はなくすよりも、うまく対処することが大事
・「唇のバテ」と「身体のバテ」で対処法が違う
・初心者は無理をしないこと
・「唇のバテ」は唇を震わせたり、横に引っ張ったりすることで解消できる
・「身体のバテ」は効率を考えて対処
・ここぞの時の勝負姿勢を決めておく
・同じ姿勢で吹き続けない努力をする
・楽器とマウスピースをみなおす

バテにうまく対処するには経験も必要ですが、やはり常に楽に吹くこと、効率よく吹くことを意識することが大切です。

皆さんも自分独自のバテ解消法を編み出してみると楽しいホルンライフがおくれますので、是非研究してみてください!


First picture By Mark Bonica via Visual Hunt / CC BY.
Third picture By zenjiro via Visual Hunt / CC BY.

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